巻機山〜其のニ〜

暗闇である。

明かりを付けず何をするでも無く悶絶し、

五分ほどしてから漸く灯りをつけた。

時刻は三時半。

軽く早朝食を済まし蚊に喰われた所へ

ムヒを塗ったくる。

四時四十分、迎え到着。

まだ暗い。が、巻機山へ向かった。

五時過ぎ、薄明るくなる頃、

登る準備が整い五時二十五分出発。

十分程歩き身体も温まり出した頃、歩く足下に

ドングリが点々と落ちてる事に気付く。

『わえわえ、熊ぁ出ねっぺなぁ、、、』

と思ってたら、

ガサガサガサ!

と、登山道から10M程離れた所で音がした!

暫く私ともう一人は立ち止まる。

、、、、、、、、、

『今の熊だよなぁ』

との事。

あーーー、怖かった、、、

コレはマズイぞ、て事でもう一人が

音楽を流しながら登る事にした。

約三十分後

ヌクビ沢コースと天狗尾根コースの分岐点に到着した。

今回は天狗尾根コース経由の避難道である。

数分歩くと沢に出た。

何度も来てるが、何度来ても新鮮だ。

矢張り、山てやいいねぇ〜。

小休止を挟みつつ

沢を登り、横道入り、沢を登り、横道入り。

あぁ、絶景かな絶景かな。

そのうち、

岩の様に硬くも、何とも瑞々しい雪渓が

出てきた。

今年ん冬は雪が多かったすけ盆明けたてがんに

こんげにあらぁ。

あぁ、雪渓かな雪渓かな。

暫く進むと一面岩盤の様な開けた所に出る。

勿論そこここに草が生えてたりするので

足場が無い訳ではない。

大きく右カーブして垂直に登る場所があるのだが、その垂直に登る所の右横に見事な滝があるのだ。

そして大きく右カーブする岩盤には大きな雪渓が。

雪渓と滝がコラボしているのだ。

思わず道から逸れて高い所に登り写真に収めようとした。

すると、

パーティーのもう一人が雪渓の前に立ち、俺が写真撮ろうとしてんのに奇妙なダンスを踊りやがるから余計なもんまで写っちまった!

あぁ、絶交かな絶交かな。

それからも順調に進み、二つ目の別れ道に着く。

そこは絶景雪渓絶交をない交ぜにした様な

設計になっていた。

『雪渓が崩れてるけど、行けるか?』

と、悩む二人。

しかし来た道戻るのも嫌だ。

恐る恐る崩れた雪渓を渡る。

緊張感MAX。

体内の核を軸にバランスよく渡る。

一歩一歩慎重に。

『はぁ〜、、、』

渡り切ると思わず溜め息。

あとはヌクビ沢のスタート地点まで行って

下山である。そんなに遠くはない。

天気も良く心地良い。

無事、下山ポイントまで到着。

最後の一服してから下山する事に

もう一人は『ゆっくり下る』て事なので、

私は先に下った。

それで開始早々のガサガサ!を思い出したので、

今度は自分の音楽を鳴らす事にした。

電波が無いのでオフライン設定。すると、一曲しか入っていない。

何故か伝説男。まぁ、全然良いのだが。

下りは熊の心配も無く足元の心配も無く

九時二十分に戻ってきた。

もう一人も九時四十分に戻ってきた。

いやはや、無事生還できて良かったなぁ。

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